皆さんは、『ちはやふる』という漫画を読んだことはありますか?
漫画じゃなくても、映画やアニメでその物語に触れたことはありますか?
…ん?
これは虹ヶ咲の話じゃないのか?
記事間違えたかな。
と思ったあなた。大丈夫です、紛れもなく虹ヶ咲の話をします。が、その前に、答えがYesの方もNoの方も、少しだけ『ちはやふる』の話に付き合っていただければ幸いです。
自分のことでないと夢にしたらあかん
『ちはやふる』は、主人公の綾瀬千早が競技かるた(百人一首)の世界で日本一の座 "クイーン" を目指す物語です。物語では主に高校生時代が描かれています。
もちろんかるたの技術を高めていく過程自体が面白いのですが、この作品の最大の魅力は名言の多さです。高校の後輩や友人、他校のライバル、そして以前からお世話になっている先輩や先生と、かるたを通じて深く関わり合う中で、千早たちはたくさん悩み、たくさん考え、たくさん涙し、たくさん笑います。友人を勇気づける難しさ、悔しい気持ちの受け止め方、かけがえのない友情の美しさ、今この瞬間は二度と訪れないという儚さと、そこから生まれる覚悟、溢れるくらいたくさんのことを感じて、学んで、受け入れて、大人になっていきます。描かれているテーマとしては、かなりラブライブ!に近いんです。
そんな『ちはやふる』の、まさに原点ともいえる言葉がこちら。
自分のことでないと夢にしたらあかん
小学六年生のころ、千早にとって一番の夢は、一つ年上の姉・千歳が日本一のモデルになることでした。ある日、福井からやってきた転校生・綿谷新のアパートを訪れた千早は、「お姉ちゃんが日本一になるのがあたしの夢なんだ!」と話します。すると、新はこう答えました。
この後、自分の夢は何かあるの?と聞かれた新は、かるたの札を取り出し、「やろっさ!」と言って札を並べ始めます。千早も学校行事で年に一回かるた大会があったので、ただのかるただし…という気持ちで札を並べます。しかし試合が始まると一転。鋭く真剣な眼、尋常ではない早さの取り、宙を飛ぶ札…初めて見る世界に圧倒されると同時に、強い悔しさを感じます。試合が終わって、新は「かるたで名人になるのがおれの夢や」と答えます。千早の夢が始まりを告げた日でした。
先が読みたい!詳しく知りたい!と思われた方は、第1巻を無料立ち読みしてみてください。今のシーンもここで読めます。
この「自分のことでないと夢にしたらあかん」というセリフですが、私はこれを聞くたびに、深く頷きながら、少し寂しくなってしまいます。自分自身競技かるたをしている身なので『ちはやふる』は大好きですし、この言葉も頭ではその通りだとわかっていると思います。
それでも、どこか救いのないような感じを覚えてしまう理由は、おそらく「応援ってそれっぽっちのものなのかな…?」と思ってしまうからです。夢を追うのは自分じゃなければいけない、だから誰かの夢を応援するのは意味がない。応援は何も生まない、逃げだ。そう否定されているような気がしてしまうのです。
私は、誰かの夢を応援することは、自分の夢を追いかけることと同じくらい素晴らしいことだと思いたいですし、実際にそうだと思っています。千早も応援することにときめいていたから、夢として掲げることができていたんだと思います。ただ、正面切って「それは夢とは言わない、そんなんじゃダメだ」と言われてしまうと、なかなか言い返せない気がします。応援の素晴らしさはどこにあるんだろう……?
理屈と感情の戦い
理屈で考えると心で感じていることとは違った結論に達する、ということは往々にしてあります。ラブライブ!で言えば、スクスタ*1の9章6話で開かれた栞子と菜々の公開討論がその最たる例ですね。これはある意味当然で、議論は理屈で動くので、理屈と感情を戦わせると、理屈が勝ってしまいます。今回のケースでも、議論をした場合おそらく「誰かの夢を応援するのは自分で夢に立ち向かうよりも弱い」という結論に達することでしょう。
心のどこかでは、そうじゃないとわかっていても、うまく説明できない。どうにも納得する/させることができない。このもどかしさを吹き飛ばす方法はただ一つ、"感情"に訴えることです*2。例えば、実際に体験して、心で感じてみる/もらうのが一つの手でしょう。感情には、理屈を打ち破る力があります。
正論をいくら振りかざしても、心を動かすことはできないのです(CV.三船栞子)。
そして、実際に自分で体験しなくても、心で感じることができる方法があります。それは、物語に入り込むことです。本でも漫画でも、ドラマでもアニメでも大丈夫。現実世界で実際に行動するよりも効率的に、時にはより深く、"感情"にたどり着くことができます。
ただ、今までは「応援」にピントを絞った物語はあまり多くありませんでした。あったとしても、恋愛が絡んでそのテーマが霞んでしまうケースがほとんど。
それを初めて実現してくれるのが、『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』であり、高咲侑ちゃん であると、第1話を見て確信しました*3。
TVアニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」PV ロングVer.
#2 TVアニメ「ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」 第2話
「応援のときめき」に辿り着く日まで
彼女は、第1話の後半でこんな言葉を残しました。
やっぱり難しいのかな。
夢、追いかけるのって……え?
アイドルやるって、そういうことでしょ?
自分の夢は、まだ、ないけどさ。
夢を追いかけてる人を応援できたら、私も何か始まる!
そんな気がしたんだけどな……なんてね!
『ラブライブ!』では夢を追いかける9人が、『ラブライブ!サンシャイン!!』では輝きを追いかける9人が主役として描かれてきましたが、今回の『ラブライブ!虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会』では、アイドル活動を行う9人だけではなく「夢を追いかけてる人を応援」する彼女が描かれることになります。つまり、今までは夢追う人の視点がメインで描かれていたのに対し、今回は誰かの夢を応援する人の視点が深く描かれることになるわけです。
応援して始まる"何か"がどんなものなのか、そして、本気の応援の先に彼女が見つけるものは何なのか。これから彼女は、その答えを探す旅に出ます。
その旅路を一緒に辿っていくことで、「応援の素晴らしさはどこにあるんだろう……?」「本気の応援の先にはどんな景色が待っているんだろう……?」という疑問の答えを見つけることができるんじゃないかな、と期待を膨らませています。
あの古いアパートの一室で、千早がまだ言葉にできなかった「誰かの夢を応援する」ときめきの正体。私もまだ完全には掴み切れていない「本気の応援」の先にある未来。あなた -侑- はきっと、その答えを言葉に、形にしてくれることでしょう。Bon voyage!